10万枚を超える写真データの整理とストレージ選び
1st June 2016最初にデジタル一眼レフを買ったのがちょうど10年前。カメラも、ハードディスクも順調に増え場所も手間もかかるようになってしまったので写真の整理法から、ストレージの使い方まで半年がかりでやり方をかえていきました。
事前準備
最初はすこし軽い気持ちで始めましたが、結果的にはかなり大掛かりな作業になってしましました。
- データ容量、内容の確認
- ファイル形式の統一
- 重複の排除
- ファイルの分類
- 新しいストレージへの移行 最初から最終形態を設計/想定していた訳ではありませんが、随時微調整しながら進めています。
整理を始める前のデータと容量
ハードディスクを整理してみると、ハードディスクはNASに搭載しているものもあわせると15本、NASは2台、総容量は30TBと一般家庭にしてはかなりの容量です。それぞれのディスクのおおよそ6〜7割は使用中で単純計算で18TBものデータが存在していました。
ただそのほとんどはバックアップ用途の重複保存です。同じデータを最低2本以上のディスクに保存することにしていたので、単純計算でデータ容量は9TB程度です。 またさらに、写真管理ソフトの形式によって重複している部分もありました。写真の管理は2001年ごろからはiPhoto、2007年ごろからはAperture、2013年からはCapture Oneを使っていました。2013年は少しだけLightroomも使っていたのでこのデータもありました。
Apertureのサポート終了に伴う移行では最終的に、Capture Oneに落ち着きましたが慣れの問題もあり最終的にCapture Oneに一本化できたのは2014年後半でした。この間、データはAperture形式とCapture One形式の二通りのライブラリとして管理していました。
ここまでの見積もりメタデータやサムネイルファイル、重複などををおおまかに調査したところ最終的なファイルサイズはおおよそ3〜4TB程度になると見積もりました。
整理を始める前の写真
もう一つの問題点は、簡単には狙った写真が見つけられないということです。連射した写真や似たような構図の写真が大量にあると、毎回無視できないほど時間がかかります。多いときには1日に1,000枚以上撮影していることもあり写真を見直すことがおっくうになってきますが、そのように大量に撮影しているときにいい写真があるのでまたもどかしい気持ちになります。
たとえば3年前の旅行で撮った写真を加工して印刷したい、といったときに該当のRAWデータを見つけるのは結構な手間がかかりました。1週間の旅行で5,000〜7,000枚程度の枚数にはなるので、ApertureやCapture Oneのライブラリを開くだけでもしっかりと時間がかかります。
撮影当時にApertureやCapture Oneで調整した結果からさらに編集したいとき、目的のApertureライブラリやCapture Oneセッションを探し出すというのはかなりの労力がかかりました。仕方なく、現像済みJPEGから再調整するということもありましたがせっかくRAWで保存してあるのに活用できないのはもったいない気がします。
このように整理を始める前はデータも、写真自体も管理がばらばらで再利用するのがとにかく面倒で、一念発起しないとできない。という状況でした。
目標と方針を決める
写真を撮るのは楽しいですが、整理するのは面倒だと感じています。写真は趣味で、ビジネスとして撮っているわけではないので、整理に割ける時間も限られます。趣味の範囲という前提に立つと「写真を撮るのも、後から見ることも楽しい」ぐらいが目標となり、このための雑務を減らし、秩序をつくっていくことがアクションとして考えられます。
この目標実現のために最初に決めた方針は次のようなことでした。
- 資産として再利用できるようにする。
- フラットな構造に管理する。たとえば、複数のディスクに分散しないようにする。
- すでに機械化されている、または将来機械化されそうな作業をしなくて良いようにする。
NASからの移行
まずは重複を排除しつつ、データを一ヶ所にまとめることにしました。3年まえからほとんどのデータは、NASのDrobo 5N (実効容量9TB)にまとめていました。このNAS上にすべてのディスクにあるデータをまとめ、整理していくのが順当ではあったのですが一つ問題がありました。
Mac OS XはNASへのアクセス性能がきわめて悪いことです。データ転送などある程度まとまった処理はさほど悪くないのですが、ファイル一覧などファイルを探す処理が極端に遅いのです。 Finderでファイル一覧を開くだけで数十秒〜数分かかることもあり作業に大きな支障がありました。通常、NASをMac OS Xから参照するとAFP (Apple File Protocol)で接続されます。これを、SMB2というプロトコルに変更すると若干改善するように見えるのですが、それでも体感速度はさほど変わりませんでした。Drobo 5NではmSSDを使ったキャッシュを搭載することができますが、このキャッシュを搭載してみてもさほど体感上変わりはありませんでした。
かわりに、Mac OS X上のVirtualBoxにUbuntu Trustyをインストールし、SMBクライアントでマウントしてみると見違えるように高速に動作し原因はMac OS Xの問題とほぼ限定されました。実際に、Mac OS Xからrsyncなどのコマンドでファイル転送してもシステムコールレベルでNAS側に制御ファイルを作成したり削除しているような振るまいが見られこのオペレーションが低速につながっていると想像できました。
作業をUbuntu上で行うことも選択肢にはありましたが、Capture OneやApertureなどMac OS X上のアプリケーションも利用する必要があることから、Drobo 5Nに集約することはあきらめて6TBのハードディスクを新たに購入しここにすべてのデータを集約することにしました。
Drobo 5Nの純粋な性能と比べても、ネットワーク越しのアクセスとUSB 3.0の直接接続では大きくスループットも違いがでます。
データのコピーとデータ形式の統一
データのコピーは基本的にすべてrsyncコマンドを使いました。信頼性があるのと、中断せざるを得ないときにも停止して安全に再開することもできます。Mac OS Xの性能問題もあり、コピーは基本的にUbuntu上で行いました。それでもDrobo 5Nからの転送はおおよそ1〜2週間程度かかったと思います。
最初にApertureライブラリを転送しました。Capture OneにApetureライブラリをインポートする機能もあるので、こういった機能も使いつつJPEG、TIFF、RAWファイルなどの元データとメタデータをApertureに依存しない形式に変換していきました。この作業も1〜2週間かかったと思います。
Capture OneはEIPというファイル形式で出力することができます。EIPはRAWデータ、メタデータ、調整データをすべてひとつのファイルにまとめたものです。EIPファイルさえあれば、調整データもメタデータも含め写真1枚ずつ開いて加工することができます。EIPファイルの実態はZIPファイルで、中にはRAWデータや調整データを含むファイルが格納されています。
Apertureのライブラリ、Lightroomのライブラリ、Capture Oneのライブラリはそれぞれライブラリとして一つ大きなパッケージとして管理するので操作が高速であったり、アルバム管理など便利ですがEIPファイルのように1枚一枚別々に管理できるとApertureやCapture Oneなど専用ソフトでなくても操作できるので、後述の重複排除など操作では重宝します。
このように、Capture OneのデータはEIP、ApertureのデータはRAW + XMPファイルとしてエクスポートして一ヶ所にまとめることができました。
重複排除
重複排除にはGeminiというアプリケーションを利用しました。ファイル数が多すぎるとUI操作がもたつくこともありますが、操作がわかりやすいのとファイルをプレビューしながら操作できる点が大きなメリットです。
Geminiでおおまかに重複排除したあとは自作のスクリプトで重複排除を進めました。RAWから現像したファイルはいったん削除することにしたので、EXIFデータを見ながら日時、カメラなどのデータが一致するJPEGファイルを削除。他には、前述のEIPファイルではZIPファイル中にRAWファイルがあるため、Gemini等の重複排除では期待通り重複を排除できないためEIPファイル中のRAWファイルデータを読み出して比較しながら重複排除するスクリプトなどを作成しました。
99%以上のファイルは有効なEXIFデータが入っているのですが、かなり古いデジカメで撮影した写真などデータが含まれていなかったり、EXIFなどのデータが破損している場合があったのでこういったファイルはそれぞれ目視確認しつつ作業を進めました。
このような作業を繰り返し重複排除が終わったときには13万枚程度の写真ファイルが整然と並びようやく全貌が明らかになりました。
分類する
写真をおおまかに2つのグループにわけることにしました。1つは、何度も見返したい写真。もうひとつはそれ以外の写真のグループです。
何度も見返したい写真は比較的しっかりバックアップがとられるように管理したい写真で、それ以外の写真は最悪なくなっても気にしないといったポリシーで管理することにしました。
グループ分けの考え方
「すでに機械化されている、または将来機械化されそうな作業をしなくて良いようにする。」という方針から、写真のレーティングで機械化されそうなところは機械にたよることにしました。
たとえば写真のなかの顔認識についてはかなり技術的に進んでいて、特定の人が写っている写真を撮り出すということは今日たやすい操作です。この画像認識技術はまだ多少精度の問題もあります。生物や植物の図鑑をつくるような目的である程度厳密に分類をするといった用途には向きません。今回の目的は必要な写真をすぐ見つけたい。というぐらいですから、多少違う写真がピックアップされたところであまり影響ありません。
Siriのようなアシスタントに「AさんとBさんが写っている去年の集合写真をさがして」とか「Cさんが写っている沖縄の海辺の写真を探して」といったら数枚がピックアップされ、ピックアップされた数枚から「ピンボケしていないものだけ」といった絞り込みもそう遠くない未来に実現するでしょう。
すでにGoogle Photosやflickrでも機械学習などの成果から「建築物」とか「食べ物」と自動的に分類したり、GPSデータがなくても建造物などから場所を推測してタグ付けするといったサービスが提供されていますのでこういった分類は手作業で時間をかける必要はありません。
今回の写真整理では利用しませんでしたが顔と名前、人のつながり、時間や場所とイベントといった付加情報のデータベースについていえばfacebookが圧倒的に大きなデータベースを持っているので、facebookが面白い提案をしてくるかもしれません。
一方すぐに機械化できないと思うのは個人的な体験による重要度の重みづけです。何の変哲もない風景写真だが自分には印象深いとか、ピンボケしているが人生の大きなターニングポイントのタイミングを象徴するとかデータとして記録していないし、定型的な表現の難しい体験による重要度はいかに機械化による分類はやや難しいでしょう。facebookやtwitterなどに記録されたイベント、発言など複合的に機械学習することでおもしろい写真の組み合わせを提案する。といったことはできたとしても、自分の印象に残ったあの写真を探す。というのとは少し方向性がちがうと思うからです。
レーティング
こう考えると機械化できるところは機械に任せるとして、印象深いシーンのみをピックアップして分類していくということにしました。ピックアップする際にはApertureやCapture Oneでは★1〜5のようにレーティングをつけることができますが、これを利用しています。
過去にもレーティングをつけていましたが統一した基準をもっていませんでした。このため時期によってほぼ★1〜3しかつかっていないとき、★3を平均として1〜5の範囲で使っているときとばらつきが生まれていました。前述の通り、個人的な体験による重要度を尺度とするので時間の経過とともに重要度が下がっているものもあれば、重要度が上がるものもあります。
たとえば、スキューバダイビングをしていて最初のころは何でもすべて珍しい魚、地形と感じ、重要と位置づけていますが、次第に慣れてくると、同じ魚/地形でも天候や構図などが優れた場合が重要であるというように変化することもあります。
レーティングは新しく★3を平均点として、★4を優秀、★5は最優秀としてつけることにしました。厳密な定義はありませんが、★5は印刷して壁に飾っておきたいような写真、★4はパソコンやスマートフォンのデスクトップ画像にしたいような写真といった感覚で点数をつけています。
★2は★3相当だが構図が似ているのでボツ、★1はピンボケや構図がかなりわるいといった使い分けです。全部の写真にレーティングをつけると面倒なので、★3以上だなとおもうときだけレーティングをつけ、同じシーンで似たような構図が多いなとおもったら★2に下げるといった調整をしています。
枚数の比率としては★1〜★2相当の枚数くらべ★3以上の枚数が1/10以下になるよう目標として、全部で13万枚ありましたので★3以上は1万枚以下を目標として調整しました。この作業が最も時間がかかり2ヶ月以上かかりましたが結果として★3はおおよそ6,000枚、★4はおおよそ700枚、★5は60枚と目標通りの枚数に調整できました。
10数年分で7,000枚、デジタル一眼レフを使い始めた近年でも1年当たり1,000枚前後となったので見通しはかなりよくなりました。
最終的に容量にして★3以上の写真は170GB、★なし〜2の写真は2TB弱とかなりコンパクト化することができました。
ストレージ
写真の保存としてこれまでRAWデータは自宅のNASやUSB接続のハードディスクに、現像済みのJPEGデータはflickrに保管していました。
今回はRAWデータも含めてクラウドストレージ上に管理することにしました。使ったのは次のストレージです。
- Amazon Drive : Amazonプライム会員になると写真データは無制限に保存することができるのでCaptureとした★2以下の写真を置きます。無制限となるのはJPEGだけでなく、NEF、ARWなどRAWファイルも対象となりますが、EIP形式などは対象外なのでEIPではなくもとのNEF/ARWなどのRAWファイルに変換しておきます。
- Dropbox : EIP形式にしたRAWファイルと調整済みの現像JPEGデータを保存しておきます。★3以上の写真のみ置きます。Dropboxはバージョン履歴をとれるので、編集履歴も自動的に保存されるのが利点です。
- flickr : flickrにはほぼすべての現像データがすべて置いてあります。flickrは使い始めてちょうど10年ほどになりますが、容量無制限のころのProアカウントを利用しているので気兼ねなくアップロードすることができます。flickrも機械学習による自動分類ができるので発見目的に利用しています。
- Google Photos : オリジナル解像度ではなく、Googleの設定した解像度以下であれば無制限に置くことができます。機械学習により自動分類されるのでここにも★2以下の写真を置きます。 多くのクラウドストレージは1TB程度以内までと容量制限がありますが、今回★3以上と★なし〜★2のように分類したことで★3以上の部分(約170GB分)については選択肢が大きく広がりました。Dropboxのようなクラウドストレージを使えばバックアップも気にすることなく自動的にとられているので大量のハードディスクやNASを管理する必要がなくなりました。
新しいワークフロー
こういった整理を進めながらも写真は日々ふえていきましたが、最終的な保存場所がきまったことでワークフローが整いました。写真を撮影したら、新しいCapture Oneのセッションを作成します。このCapture OneのセッションファイルはDropbox上に置き、すべてのファイルがDropbox上にバックアップされるようにします。
次にレーティングをつけて、★3以上の写真については調整と現像を行いEIP形式への変換などをしたうえで所定のディレクトリにエクスポートします。現像データはflickrにアップロードします。 ★なし〜★2の写真についてはRAWデータを所定の場所におきAmazon DriveとGoogle Photosにアップロードされるようにします。
ここまでの作業が完了したら該当のCapture Oneセッションは削除します。Dropbox上に削除済みファイルも保存されているので必要とあらば再度取り出せますから、心置きなく削除してしまいます。
整理をおえて
今回の整理をおえて当初もくろんだ通り、再利用については非常にやりやすくなりました。2012年の旅行写真をとりだして編集するといった基本的な操作がストレス無くできるようになりました。Google PhotosをつかってAさんが写っている写真、といったような写真のとりだしかたもできるようになりました。
まだ新しいワークフローにしてまもないこともあり、AmazonやGoogleへのアップロード作業など一部自動化できていない部分もありますが最初からDropboxに保存することでクラウド上で処理できることも多くなりました。
Dropboxに追加されたら自動的にデフォルトのレシピで現像して、Amazon、Google、flickrにアップロードするとか、レーティング情報が追加されたら長期保存対象として所定のディレクトリに置くといった仕組みを作ることもできると思います。