watermint.org - Takayuki Okazaki's note

写真整理のワークフロー

Aperture中心のワークフローからCapture Oneへ<

事の発端はAperture 3のアップデートが異様なまでにiPhoto側に仕様を寄せてきた事です。iCloudを使わせたいのはわかるけどUXまでiPhotoに寄せてくることには不安がありました。またこれに従い、Aperture自体の継続性ってどうなんだろうという疑問もありました。

Aperture 3.2ぐらいまでは安定して動いていましたが、3.3ぐらいから急にバグらしき挙動が増えて作業に支障がでるようになってくるようになりました。Appleのことだから、コアにするならプロ向けのApertureではなく全製品を取り巻く環境の中心に位置づけたいiPhotoにするでしょう。それでここで見切りを付けて脱Apertureとしようとしたのが今年の1月頃です。

その頃丁度いくつか製品を評価してCaptureOne 7が良いのではという気持ちになってきました。プレビューと最終イメージ(印刷 or RAW現像後のイメージ)が一致する、ヨーロピアンな色使い、パース調整などとにかく出力の気持ちよさにほれぼれしてこれを中核とすることに決めました。

CaptureOneは商業カメラに詳しい方ならご存知の通り、デンマークのPhaseOne社がつくる現像ソフトウエアです。PhaseOneといえば、中判デジタルバックなどをすぐ連想されるとおもいますが、まさに商用写真/印刷向けのソリューション群を扱う会社なのです。CaptureOneもまさにそのコンセプトに沿っており、CYMK印刷、テザー撮影(スタジオなどでPCで確認しながら撮影する)などに特化していました。

CaptureOneはversion 7より、おそらくハイアマチュア向けにかなりコンシューマ市場を意識した作りになっており、ApertureやLightroomでおなじみのカタログ形式(アプリが管理する配下にアプリ経由で写真をインポートし管理下におくような管理形式)の写真管理をサポート。

CaptureOneはもともとその機能名にもある通り、Sessionというテザーセッション向けのディレクトリベースのファイル管理をベースとしておりカタログ形式はまさにCaptureOne 7での新機能でした。

最初、2013年1月頃はCaptureOneを中核に据えるため、すべてをCaptureOneのカタログ形式にしようと既存の写真などをすべてカタログ配下に管理しようとしたのですがそこで問題が生じました。

CaptureOneのカタログは明らかにシングルスレッドでの動作をしており、また、カタログに収容する写真枚数に比例して動作が遅くなる(O(n)で実行時間が長くなる)ため、実用的な収容枚数は1,000枚程度で、10,000枚を超えるとまず、カタログを読み込んで起動するだけで起動の成功率が1/3ぐらいという悲惨な状況でした。

一眼レフでは月々1,000〜2,000枚程度撮影していますので毎月カタログを分けるようにしました。これで半年ほど運用してみましたが下記のような問題がありました。

Capture One 7の問題点

  • 写真の重複排除ができない。ApertureやLightroomを使っていれば当たり前の機能ですが、CaptureOneにはありません。SDカード/CFカードからの読み込み時に前回取り込みを消していなかったり、途中でCaptureOneがクラッシュするなど途中の状況がわからない場合でも手動ですべて解決せねばならずかなりつらい事がわかりました。
  • 頻繁にクラッシュする。使い方の問題ではあるのでしょうけど、CaptureOneは明らかにクラッシュし過ぎです。また、編集結果を即時にfsyncしないため、クラッシュするといくらか編集が巻き戻ってしまうという残念な状況に遭遇します。
  • RAW+JPEGや、ムービーに対する対応が貧弱。RAW+JPEGはそもそも管理できず別々の写真として管理されます。ムービーについてはなんちゃってレベルで実装されているにすぎない印象。また、これもムービーの再生などをタイミングを同じくしてクラッシュするので未成熟さを感じます。
  • かなり処理が遅い。Nikon D800で撮影したデータを扱っているのである程度遅いのは覚悟の上ですが、レーティングやメタデータ編集といった画質とは関係のない操作でもApertureやLightroomと比べれば桁が一つ二つ違うぐらい応答速度が異なります。

一方次のようなこともわかりました。

CaptureOneでカタログ管理ではなく、セッション管理とすれば処理速度の低下傾向からO(n)ではなく、O(1)になる。CaptureOneのカタログに対する操作は明らかにUIの更新 → Update → UIの更新となっていて、100枚も写真を削除したり移動しようものなら、数十分は制御が帰ってこないという、泣けてくる実装です(すくなくともCaptureOne 7.1.3まででは)。セッション管理とすると、その状況が嘘のように、普通のちょっと重めなアプリとして動作してくれます。

ワークフロー

以上のような問題から、CaptureOneをオーサリングの中核とする事はあきらめて、メモリカードからの取り込み/取捨選択/キーワードの付与はCaptureOneではなくLightroomで、それ以降のポストプロダクション処理はCaptureOneでやることにしました。

取り込み/取捨選択/キーワード付与をApertureではなくLightroomにしたのは、CaptureOneとの連携のためです。Apertureはカタログ形式、つまり、Apertureが指定したディレクトリ構造しかサポートしませんが、Lightroomは取り込みデータ+XMP(写真メタデータ)をある程度自由にディレクトリ構成をデザインできるため、CaptureOneのセッションディレクトリと共有できるためです。

Lightroomでのメタデータ編集結果を共有するためにカタログ設定の「変更点をXMPに自動的に書き込む」をオンにしておきます。 CaptureOne側で該当のファイルをすでに読み込んでいるならば「ファイル」→「メタデータの読み出し」で再読み込みすればXMPファイルからメタデータを取得してくれます。

現状の写真管理ワークフローについてまとめます。

ワークフロー

SD/CFカードからはLightroomに取り込み、その取り込み先ディレクトリはCaptureOneセッションが利用するディレクトリと共有しておきます(CaptureOne側からセッションお気に入りフォルダに設定する)。

CaptureOneに読み込まれたら、あとは必要な写真をメタデータ+フィルタによって絞り込み、編集します。

ムービーデータについてはCaptureOneに持ち込む前に、LightroomからPremiereのプロジェクトに渡します。Peremiereに渡した後は、音量、手振れ補正などをそれぞれAuditionならびにAfterEffectsなどで行います。タイトルロゴ、字幕なども同様に編集します。

HDR向けないし、パノラマ写真を時々撮る事があるのですがこれはLightroomから直接ファイルを複数選択してそのように編集するメニューがありますのでそのように編集します。その他高度な編集はPhotoshop側で行います。

写真管理ソフトウエアにはたいてい印刷サービスが連携されていますが、Lightroom 5とApertureを比べるとデザインテンプレートなどの差でApertureに圧倒的な軍配が上がると思っています。Adobe製品は全体的に、テンプレートとかサンプル・素材が少なく、3rdパーティー製品を買う事が前提となっていますがAppleのそれはある程度高品質なテンプレート・サンプル・素材がそろっており、これだけでも十二分な利用価値があります。Apertureで発注したフォトブックはAppleの決済後、各国の印刷パートナーが印刷して配送するようです。いままでに何回かフォトブックを作っていますが、クオリティー・満足度は非常に高いです。値段はさほど高くないながら、納期も5営業日(首都圏だからかもしれませんがたいてい5営業日ではなく、5日以内に届きます)に届き、色管理も十分にしていない中でもはずれがありません。Lightroomのフォトブックは、これに比べるとかなりいろいろな点をスクラッチから作らざるを得ず、少し敷居が高く感じます。

オンラインでの写真共有はflickr、everpix、tumblrを使っています。flickrは旧来のproアカウントを継続しているので容量無制限でアップロード可能です。everpixは無料アカウントで利用しています。無料アカウントでは12ヶ月前までの写真が無制限にアップロードできます。招待などいくつかアクションを行う事でこの期間制限は延長されます。月4.99米ドルで無制限になります。flickrからの同期によるアップロードもサポートしていていまはflickrのバックアップ用に使っています。flickrは公開レベルが家族、友達などコンタクト先属性を意識しますが、everpixはアルバムごとに公開URLを作れるなど短期的な画像共有には非常に相性の良いサービスと思っています。その他に、写真共有ではtumblrを使っていますが、これは自分の良いと思う代表的な写真をのせるために使っています。flickrやeverpixは容量無制限という魅力からほぼすべてシャッターを切った写真をアップロードしていますが、ある程度絞り込んだ結果として自分の写真を管理したいという思いからtumblrに写真を載せています。

flickrならびにtumblrへのアップロードは自作のスクリプトを使っています。flickrアップロードスクリプトを作成したモチベーションは、月々数十ギガのファイルを不安定なネットワーク環境でアップロードする際、既存のアップローダーでは対応ができなかったからです。tumblrについては、EXIF情報からより多くのタグを付与してアップロードしたり、コメントを整形するために使っています。

写真1枚1枚自体の管理についてですが、このワークフローではxmpファイルが大きな意味を持っています。Lightroomでつけたタグやコメントはそのままtumblrなどに運ばれるように作っています。

各ソフトウエアの良いところと、悪いところ。

1ヶ月このワークフローで写真整理をしてみました。その中ででてきた各ソフトウエアの良いところ、悪いところを整理しておきます。

Aperture 3 - 手元にあるソフトウエアの中で最も使い勝手がよく作られています。キーボードショートカットのカスタマイズや、選択、ルーペでの拡大捜査など基本的な機能が洗練されていて、派手さはありませんが最も生産的な作業が出来ると思います。一方、課題としてはAppleの方針がころころ変わってしまうために、やや振り回されている感がある事です。

Capture One 7 - 自動色調補正、現像処理、色調調整、キーストーン調整、ウォーターマークの挿入など仕上がりについて満足のいく結果を安定的に返してくれます。色調などは好みはあるとおもいますが、自動補正の際にあまりハイライトなどが破綻しない傾向があるとおもいます。一方、課題としては操作が重かったり、頻繁にクラッシュすることがあげられます。

Lightroom 5 - 全体的に軽快に動き、Adobe製品群との連携メニューが豊富なところが売りです。ファイル管理形式が柔軟なところも便利です。一方、課題としてはUI/UXが全体的に未熟なところです。モードによって選択範囲に対する操作の適用範囲が違ったり、Camera Rawなどでは空気を読んで適切な場所にフォーカスをあててくれたりするのにLightroomはそういう配慮がありません。