まずはものすごく大雑把に仮想的な目標を考えてみることにします.まず家の中を見回してみて,そこにあるものを仮にITシステムと見なすことにしましょう.たとえば,冷蔵庫やテレビ,本棚,洗濯機,勉強机,いす,ソファ,ステレオ,クローゼットなどです.私たちは普段あまり意識しませんが,日常生活において実に多くの道具を使っていることに気づきます.さて,これらの家財は普通,引っ越しをしたり,新たに買いそろえたときに機能的に使えるよう配置します.本棚や,勉強机は勉強部屋や書斎におくでしょうし,冷蔵庫や電子レンジは台所に配置します.もちろん,大掃除をするときには配置を換えてみたりすることもあります.

引っ越しをして荷解きが一段落した後や,大掃除をした直後には,家財は本来のもつべき役割を最大限発揮しています.たとえば,本棚には本が格納されているでしょうし,勉強机はノートや本が広げられるよう十分スペースがあります.ところが,ある程度時間が経つと,本棚に本が入らなくなったり,新たに陶芸の趣味を始めたりすると,今までは整然と本が並んでいた本棚に,本のかわりに陶芸の道具が格納されたり,勉強机の上に本が積み上げられたりと,すこしずつ本来の役割とは別の使われ方にかわっていくことがあります.場合によっては,面倒くさがって陶芸の道具さえも机の上に出しっぱなしになるかもしれませんし,家族の誰かが物を移動させたり,別のものをおき始めるかもしれません.

この状態が進むと,家財は本来の便利さを急速に失い始めます.ものがどこにあるか分からなくなったり,勉強のためのスペースが十分に確保できなくなる場合もあります.このため,ある段階を超えると大掃除の実施を強いられ,丸一日の労力が必要になります.新たに本棚を買いそろえたり,作業机を買い足すならば計画を含めもっと多くの時間が必要かもしれません.家族とスケジュールをあわせるために仕事を休む必要があるならなおさら大変でしょう.さて,そろそろ問題点と目標がなんとなく,想像できそうです.

問題点は,ある程度時間がたつと部屋が散らかってしまうことです.また,部屋自体も使いにくくなります.さらに,できれば大掃除のために休日をつぶすのもさけたいでしょう.目標はこれらの問題点を解決することです.具体的には,部屋が散らからないように維持することや,部屋自体の使いやすさを保つこと,さらには大掃除をしなくてもよくすることです.

さて,話をITシステムに戻して,問題点と目標をおさらいしましょう.企業や組織のITシステムは家の家財道具と同様に,多くのサブシステムで構成されており,それぞれの役割を担っています.ところが,新たな商品を扱うなどの新しい要件が生まれると,場合によっては予算や時間的な制約により既存のシステムでだましだまし要件を満たすように使ってしまう場合があります.この状況が続くと,サブシステムの持っていた本来の便利さは失われ,場合によっては全く使われなくなり,手動で業務が行われてしまうかもしれません.このような状況を想定するなら,目標は部屋の掃除と同様に
- サブシステムが散らからないように維持する.
- サブシステムの使いやすさを維持する.
- システム全体をできれば総入れ替えなど,大規模な修繕はしない.
といったところになるでしょうか.問題点をもう少しブレークダウンすると目標は修正されるかもしれませんが,現時点での仮想的な目標はこの3つにおいておくことにしましょう.それではまた次回.







